2024.02.26

廃棄物に新しい価値を与える ”アップサイクル”とは?

廃棄物に新しい価値を与える ”アップサイクル”とは?

近年は環境問題への注目が集まっていることもあり、生活の中で環境に配慮した商品を見る機会が増えたのではないでしょうか。”エコ”であることを売りにした商品や、環境への取り組みを行う企業のPRなど、いたるところで環境問題解決への取り組みが行われています。

SDGsのゴールとして設定されている2030年に向けて、世界中で環境問題解決へ向けて取り組みが動いているのです。

そんな環境問題解決への新しい取り組みとして「アップサイクル」という概念に注目が集まっています。

 

アップサイクルの定義

アップサイクルとはどのようなものを指すのでしょうか?アップサイクルとは、壊れたビニール傘や廃棄家具等の本来捨てられるはずだった廃棄物に、ストーリーやデザインなどの新たな付加価値を付け加え、別の商品にアップグレードする過程のことを指します。

日用雑貨やファッション業界においては、アップサイクルで生み出された商品は唯一無二の商品となり、アップサイクルで生み出されたという事自体が付加価値となる場合もあります。

また、アップサイクルとは反対にダウンサイクルという言葉もあります。これは、元の素材を作り変える過程で、元の素材よりも価値が落ちてしまう製造過程のことです。

例えば、使われなくなったTシャツの素材やデザインを無視したまま雑巾を作ると、そこにはTシャツ本来の良さが表現できていません。このように物の再利用過程で素材の価値を下げることをダウンサイクルと呼びます。

 

リサイクルとの違い

「再利用する」と聞けばリサイクルが思い浮かびますが、リサイクルとアップサイクルの違いはどこにあるのでしょうか。リサイクルは、廃棄物を細かく粉砕・融解し、製品になる前の状態にまで戻したうえで、新たな製品を作り出すというもの。

一方、アップサイクルは廃棄物から新たな製品を生み出すという点では同じですが、その製造過程で廃棄物の粉砕、融解は行わずにその素材の形や材質を活かしながら製造するという点で違いがあります。

そのため、アップサイクルはリサイクルと比べて、コストやエネルギー削減が可能になり、より環境に優しい製造方法と言えるでしょう。


 

 アップサイクルの事例

では、アップサイクルにはどのような事例があるのでしょうか。

・事例1【着物を再利用】

京都のアパレルブランドでは、着物や帯をアップサイクルした「靴」を販売しています。この靴は、職人が使わなくなった着物や帯を活かし、手作業で靴に再利用しているアイテムです。

日本の古き良き伝統を感じることができる一方で、現代的でモダンな雰囲気を醸し出すこのシューズは主に女性を中心に注目を集めています。

現代では、着物を普段着として着用する人は少なく、廃棄されるものが多い着物を、靴として蘇らせることで、着物のデザインや質感を感じることができます。

 

・事例2【フードロスにつながる商品開発】

ある食品宅配会社では、廃棄されるナスのヘタやバナナの皮をアップサイクルした商品を開発・販売しています。

ナスのヘタはココナッツオイルで揚げ、黒糖でかりんとうのように仕上げた新感覚のチップスです。ココナッツオイルで揚げることで、通常であれば食べにくいヘタの部分を食べやすく加工しています。

バナナの皮は、ジャムとして加工。ひと瓶に対して約20%使用し、パンやヨーグルトと合わせて料理に使うことが可能です。近年、フードロスが問題視されている中、本来であれば廃棄される食品の商品化を実現しています。

この商品を通じて、小さい子どもを持つ家庭でもフードロスやアップサイクルについて学ぶこともできます。

 

・事例3【傘にデザイン性と機能性を加える】

あるアパレルブランドでは、職人が廃棄予定の傘をアップサイクルしてトートバッグを製作・販売しています。そのために、職人が1本1本傘を選定。選んだ廃棄予定の傘を手作業で縫製して作ります。

プラスチック傘をリサイクルすることによって、プラスチック廃棄量を削減し、環境問題解決の一助になることができます。

 

おわりに

アップサイクルは、「持続可能な社会」を作っていく上で欠かせないキーワードです。

私たちも「作って使って捨てる」、「なくなったら買い替える」と言った大量生産大量消費の考え方から、「素材の良さを活かしながら作り変える」という持続可能な考え方にアップグレードしていく必要があります。

環境に配慮をして、物を大切に使っていくことは、私たちの世代だけではなく、未来の世代にも影響を与えることです。このアップサイクルを機会に、まずは身の回りの捨てるはずだったモノの有効活用について考えてみてはいかがでしょうか。