2022.12.21

新しい観光の形「ニューツーリズム」の可能性とは?

新しい観光の形「ニューツーリズム」の可能性とは?

近年の旅行は、個人化と共に旅行者ニーズの多様化が進んでいます。大人数で参加するツアーではなく、「多品種・小ロット」と言われる、よりテーマ性が強く、きめの細かい旅行商品の提供が求められているのです。

こうした観光業の動きに対し、観光庁では2007年に滞在型を含む新たな旅行形態を「ニューツーリズム」と称して、その普及・促進を始めました。そして現在、「グリーンツーリズム」「エコツーリズム」「産業観光」「ヘルス(健康)ツーリズム」「ロングステイ」「文化観光」等、様々な新しい旅行の形が普及しつつあります。

ニューツーリズムはこれまで主流だった大人数で旅行に行くマス・ツーリズムに代わる国内観光の新しい可能性であるだけでなく、観光における地域活性化の鍵となり、インバウンド観光の発展に貢献できると注目されています。

ニューツーリズムの具体例

ニューツーリズムは「テーマ性が強く、地域資源を組み込んだ体験型・交流型の新しい観光商品」の事を指します。その具体的例は以下の通りです。

 


エコツーリズム

観光庁の定義によると”地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組み”とされています。

具体例:屋久島エコツーリズム
屋久島の自然を体感しながら観光・レジャーを体験できるだけでなく、屋久島ガイドから自然と暮らしの関わりを教わることもできます。
(環境省「屋久島エコツーリズムガイドブック」p4)

 


グリーンツーリズム

農林水産省によるとグリーンツーリズムとは”緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動”と定義されています。

具体例:青森県鰺ヶ沢町
白神山地が世界遺産に指定されたことをきっかけに、豊かな自然の恵みが四季を通じて楽しめるグリーンツーリズムを推進しています。
(鯵ヶ沢白神グリーンツーリズム推進協議会)
 


産業観光

歴史的・文化的価値のある産業文化財や生産現場、産業製品を観光資源とし、それらを通じたものづくり体験や人的交流を促進する観光活動のことを指します。

 

ヘルスツーリズム

旅をきっかけに健康増進・維持・回復・疾病予防に寄与するようなツーリズムを指します。

具体例:熊野古道健康ウォーキング
熊野古道の自然と歴史に触れながらウォーキングをします。プログラムには健康チェックやウォーキングガイドが含まれており、心身ともに健康に繋がる取り組みです。
(田辺市 健康増進課)

 

ダークツーリズム

”人類の悲しみの記憶を巡る旅”と定義され、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にしたツーリズムを指します。

 

ガストロノミーツーリズム

その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズムのことを指します。


スローツーリズム

効率やスピードを重視するのではなく質を重視する旅行を指し、地域の人との交流や生活文化体験型のツーリズムです。
 

 

このように、ニューツーリズムには各地の地域資源や地域特性を旅行商品として活かしやすく、地域振興につながるという特徴があります。それぞれの地域に存在する自然環境、風土、歴史、文化、民俗慣習、有形無形など、これまで注目されてこなかった資源が、新たな観光需要創出の鍵になるのです。


ニューツーリズムの課題とは?

国内旅行の需要拡大のためには、国内旅行ニーズの変化、特に「体験型」「交流型」旅行の需要の高まりを踏まえて、地域資源を活かした新たな形態の旅行商品の創出と、宣伝広告を促進することが必要です。

しかし、ニューツーリズムは新たな形態の旅行商品である場合が多く、具体的な旅行商品の情報や成功事例の蓄積・広報が十分ではありません。そのため、地域の観光関係者がその創出に取り組みにくいという現状があります。

特に広報の面では、商品を造成した地域の観光関係者にはオウンドメディア等の販売チャネルはなく、幅広い販売チャネルを有する旅行業者等にとっても、地域に点在する多品種・小ロットの旅行商品を発掘することは多大なコストがかかるため、流通しにくいという問題があります。ニューツーリズムの普及には、旅行者ニーズの把握や、旅行商品の流通に向けたノウハウの蓄積、ターゲットとなるユーザーへの適切なPRが必要となります。



ニューツーリズムは旅行への細分化したニーズを満たすことのできる一つの解決策であり、同時に地方創生にもつながる注目の概念です。shisalyでもニューツーリズムに関連するプランを多数掲載中です。情報の蓄積がしにくい分野だからこそ、この機会に視察に赴いてみてください。

皆さんが抱える地域の課題解決につながるアイディアに出会えるはずです。