2022.07.28

マルチワーカーが地方救う!特定地域づくり事業協同組合とは?

マルチワーカーが地方救う!特定地域づくり事業協同組合とは?

地方の中でも離島や中山間地域等の過疎地域は、少子高齢化の影響から深刻な人手不足に悩まされています。こういった過疎地域には、工業製品など製造・出荷が安定している仕事は少なく、農業、漁業、観光等の繁忙期が季節によって偏る仕事が多いのです。

そのため、事業者単位で見ると年間を通じた仕事がなく、安定的な雇用環境や、一定の給与水準を確保できないため、人を通年雇用できない問題を抱えています。この雇用の問題が、人口流出の要因やUIJターンの障害となり、ますます地域から人手を奪う結果になるのです。

そこで総務省では、令和2年6月4日より「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」を施行し、日本全国に「特定地域づくり事業協同組合」設立。過疎地域の人手不足解消のために行動しています。

 

特定地域づくり事業協同組合制度とは?

この特定地域づくり事業協同組合とは、人手不足に悩む過疎地域の小規模事業者が事業協同組合を設立、十分な就労条件(給与等)で移住者や地域住民等を雇用し、その雇用者を季節ごとの労働需要に応じて組合員等に派遣する「労働者派遣事業」を行う団体のことです。

国と町が雇用者の人件費や事務局経費を助成し、制度を支えます。繁忙期の人手不足に悩む事業者にとっては人材確保に繋がり、市町村にとっては都市部からの移住促進や地域での安定的な雇用創出が期待されます。

組合員には地域内の事業者であれば法人、個人に関係なく加入することができますが、任意団体やグループ等は組合員になることができません。また、人材派遣が禁止されている業務(建設業、警備業など)に職員を派遣することもできません。

繁忙期に人手不足で困っている、従業員を雇いたいが通年雇用は難しいと感じている事業者には大きなメリットのある制度です。組合員は、雇用者の給与計算や、保険や年金等の手続きは一切不要で、日数分の利用料を支払うだけでご利用できます。派遣利用料は組合にもよりますが1時間あたり800円〜1500円ほどです。いい人材と出会えた場合は直接雇用することにもつながるので、直接雇用に至るまでのマッチング期間と捉えることも出来ます。

 

複数の仕事を組み合わせる新しい働き方

派遣職員は、事業協同組合の正職員として雇用され、地域内の様々な事業所に派遣されます。この制度のルールとして1年間に2ヶ所以上の事業所で働かなくてはいけないので、季節ごとに複数の仕事を組み合わせたマルチワーカーとして活躍することになります。

大きなメリットとしては、通年雇用のない過疎地域でも安定した雇用環境(福利康生を含めた)が享受できることです。

また、複数の事業所に派遣されるので“仕事のお試し”が可能で、自分に合った仕事やライフスタイルを見つけやすくなります。移住者であれば幅広い人脈のアクセルできるので、地域に溶け込みやすいメリットもあるでしょう。

 

自分に合った働き方を見つける

派遣先に関しては、事業協同組合から強制されることは原則ありません。複数ある派遣先の中から希望の派遣先を選ぶことができます。ただし、個人のスキルや時期によっては希望ではない派遣先をお願いされることはあります。

働き方としては異業種組み合わせ型、同業種組み合わせ型、事業所固定型の3つのケースが考えられます。いろんな仕事を体験してみたい方は異業種組み合わせ型、自分のスキルを活かして複数の事業所を掛け持つ同業種組み合わせ型、1ヶ所の事業所を中心にした事業所固定型と、自分に合った働き方が出来るのもこの制度の特徴です。

 

日本全国に広がる特定地域づくり事業協同組合

現在、日本全国で33組合(令和4年2月28日時点)が活動を行っています。派遣先の種類としては「農業」が最も多いほか(10組合)、第三次産業への派遣を行う組合も過半を占めており(小売(9組合)、その他の第三次産業(9組合)等)と続きます。

 

まだ始まったばかりの制度ですから、今後は持続可能な運営に向けては独自事業の実施や、地域による特色が色濃く反映されてくると予想できます。制度自体もブラッシュアップされていくかもしれません。これからの地域を担う人づくりに大きく貢献できる制度になるのかどうか、今後の動向に注目すべき制度です。