2022.12.07

新たなコミュニティスペース”サードプレイス”の可能性

新たなコミュニティスペース”サードプレイス”の可能性

昨今の日本ではブラック企業や過労死という言葉が話題になる一方で、ライフワークバランスを促進する取り組みや、施策も多く行われて来ました。そんな中で”サードプレイス”という言葉が注目されています。

サードプレイスとは、1989年にアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが著書『The Great Good Place』で定義した言葉で、「家庭や職場での役割から解放され、一個人としてくつろげる場」の事を指します。

当時のアメリカでは、自動車依存のライフスタイルが一般的になり、ファーストプレイス(自宅)とセカンドプレイス(職場)を自動車で行き来するだけの生活になりました。その結果、社会コミュニティや個々のライフスタイルの喪失が顕著に現れ、立場や役割、しがらみの無い、本当の自分に戻れる居場所としてサードプレイスが注目されるようになったのです。

サードプレイスの定義とは

まず、ファーストプレイスとセカンドプレイスは以下のような特徴を持っています。

ファーストプレイス
睡眠、食事、入浴等を行う自宅の事を指します。自宅だからと言ってストレスの全てから解放される訳ではなく、家族や家事、義務や責任等、各家庭での問題もある場合が多いです。

セカンドプレイス
職場、または学生ならば学校の事を指します。仕事や学習の場であり、ストレスが溜まりやすい傾向にあります。また、上司や先輩等様々な立場の人との人間関係が多くあり、責任も重いため、自分らしさを表面に出せない人も多くいるのが特徴です。

一方、サードプレイスは以下のような特徴を持ちます。

サードプレイス
家でも仕事場でもない第3の場所のこと。社会学者レイ・オルデンバーグは「家庭や職場で の役割から解放され、一個人としてくつろげる場」と定義しています。また、サードプレイスには以下の条件を満たしている必要があるとしています。

・個人が自由に出入りでき、中立の領域にある事
・だれでも受け入れられ、平等な場である
・会話が中心
・雰囲気を構成する常連が存在する
・時間的、立地的な利便性
・商業主義的でなく、目立たない場所
・遊び心のある空間
・人々が根付き、社交再生の場

文化の違いから、日本ではサードプレイスに対して「人との交流」ではなく「一人でくつろぐ時間」を求めている傾向があります。そのようなサードプレイスの形を”マイプレイス型”といい、日本特有のサードプレイスの形と言えます。

サードプレイスの役割

家でも職場でもない第3の場所としてのサードプレイスには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、第一に挙げられるのはストレスの低減です。サードプレイスでは責務やタスクから物理的に解放され、自分の好きな事に時間を割けるのでストレスの低減に繋がります。

次に、新しいコミュニティを構築することができます。サードプレイスには様々な人が集まり、交流も行われる場合が多いので、新たな人間関係の構築やコミュニティの広がりに期待できます。特にコロナ禍を経て、テレワークが急速に普及している昨今は、他人とのコミュニケーション不足が問題視されているので、今まで以上にサードプレイスが重要になるでしょう。

内閣府が2021年に行った「満足度・生活の質に関する調査報告書 2021~我が国の Well-beingの動向~」によると、生活満足度において「社会とのつながり」「生活の楽しさ・面白さ」など、外出・活動自粛の影響を受けやすいと考えられる項目に低下が見られました。

また、同調査ではテレワーク率が上昇している一方で、社内での気軽な相談・報告や、オンラインのみでのやりとり、取引先とのやりとりなど、人とのコミュニケーション面の不足や困難が顕著に現れているという結果も出ています。

こういった社会背景からも、今後の日本社会にはサードプレイスが増えていくと考えられます。人との交流をメインにするもの、一人で過ごす時間を大切にするものなど、サードプレイス毎に様々なコミュニティが形成されるかもしれません。職場と家庭以外の理想の過ごし方にあったサードプレイスを探してみましょう。