2023.09.15

教育から地方創生に挑む”高校魅力化プロジェクト”とは

教育から地方創生に挑む”高校魅力化プロジェクト”とは

近年、日本では少子高齢化が問題とされ、特に離島や中山間地域では過疎による人口減少に歯止めがかからない状況になっています。その問題を解決するために、これまで企業誘致や街づくりなど、日本各地で様々な地方創生への取り組みが行われてきました。

そんな中、教育という観点から地方創生に繋げる”高校魅力化プロジェクト”という取り組みが注目を集めています。そこで、今回は”高校魅力化プロジェクト”とはどんな取り組みなのかについてご説明します。

 

高校魅力化プロジェクトとは
 


高校魅力化プロジェクトとは、地方の人口減少を背景に、教育という切り口から地方創生を図り、多くの保護者が通わせたい、多くの生徒が通いたいと思えるような魅力的で特徴のある高校を生み出す取り組みです。

高校魅力化プロジェクトは、地域や目的により違いはありますが、ベースとして3つの柱が定められています。

 

1.カリキュラム改革
 

高校魅力化の取り組みとしてまず挙げられるのが、その高校・その地域でしか学べない教育課程を作成するカリキュラム改革です。

数学や国語などの教科学習以外に、総合的な探求の時間として、その学校独自の教科を設定します。具体的なものとしては、会社の見学や地域のニーズ調査、観光ビジネスの理論と実践など、その地域の資産を活かした内容です。

机の上での学びだけでなく、当事者意識の醸成やリーダーシップ、社会で必要な問題発見・解決能力などを養います。


2.学力・進学保証をする公営塾の設置

地方には塾が少なく、進学や学力の向上には不利と言われていますが、高校魅力化の取り組みでは学力の向上のため、公営の塾を設置する場合が多くあります。

ICTを活用した映像授業を行うことで、個々の進路・学力に合わせた授業展開が可能です。

 

3.リーダーシップやコミュニケーション能力を育む教育寮の設置

高校魅力化の取り組みで設置される寮は、従来のような食事と寝床を提供する生活寮ではありません。寮で過ごす上でのルールを生徒自身が決め、より快適で学びの多い環境を作っていける自治寮のような形の運営をしています。

また、寮には生徒の伴走や地域と生徒を繋ぐ役割を担うハウスマスターが設置され、日常的に活動やキャリアの相談をすることが可能です。

 

高校魅力化プロジェクトの経緯

高校魅力化プロジェクトは過疎による人口減少の危機感から始まりました。現在の日本では少子高齢化や過疎が進み、各地で学校の統廃合が頻繁に行われています。

教育機関の有無が地域に与える影響は甚大です。通える学校が無ければ子どもを連れた家族は転居せざるを得ません。さらに他地域からの定住・移住も見込めなくなります。

高校魅力化プロジェクトの発祥である島根県隠岐郡島前地域は、正に上記で示した問題を抱えた地域でした。地域で唯一の高校である隠岐島前高校では、12年間で生徒数は3分の1にまで減少。

そんな廃校寸前と言われた高校を生徒からも保護者からも魅力的なものにするために、学校・行政・地域住民が連携し”高校魅力化プロジェクト”が生まれました。

現在では、約20箇所を超える自治体で3本の柱を軸とした高校魅力化プロジェクトが導入されています。導入された高校は、取り組みの規模や効果の大小はあれど廃校になった高校は一つもありません。

 

おわりに

このように、高校魅力化プロジェクトとは、高校そのものを魅力化するというだけではありません。

その土地でしか学べないものは何かを考え、地域資源を再定義したり、教育機関・行政・地域住民が方向性を揃えるきっかけにもなります。また、高校魅力化による人口増加、関係人口の創出も可能です。

地域活性や地方創生の取り組みに興味のある方は、是非一度教育という切り口から高校魅力化プロジェクトを参考にしてみては如何でしょうか。