2023.05.23

地方におけるデジタル技術の可能性”デジタル田園都市国家構想”

地方におけるデジタル技術の可能性”デジタル田園都市国家構想”

2021年9月に発足されたデジタル庁。行政のデジタル化において中心的な役割を果たすことが期待されています。

そんなデジタル庁が2022年に内閣府と連携してデジタル田園都市国家構想を進めていくための基本方針案をまとめました。今回はこの”デジタル田園都市国家構想”とはどのような施策なのかについてご紹介していきます。
 

デジタル田園都市国家構想とは

デジタル田園都市国家構想は”全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会”を目指して2022年にデジタル庁と内閣府によって発表されたものです。

地方が以前から抱えていた少子高齢化や人手不足などの様々な問題に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、地方はさらなる打撃を受けました。デジタル田園都市国家構想は、それらの地域経済や社会の課題を、官民の様々な主体がデジタル技術を利活用して解決する取り組みです。

それにより、地方の良さをそのままに、都会と同じもしくは違った利便性と魅力のある地域を作ることを目指します。

デジタル田園都市国家構想を実現するためには表面上だけのデジタル技術の利用ではなく、国民の一人ひとりがそれぞれの暮らしの中の課題に向き合い、デジタル技術を暮らしや経済に活用することが必要となります。
 

デジタル田園都市国家構想4つの柱

地方では、前述したような様々な課題が複雑に絡まりあっています。

このような問題を解決するのは簡単なことではありません。デジタル田園都市国家構想では、構想の実現のために主に以下の4つの柱を中心として、デジタル技術の導入、導入した技術を利活用して多岐にわたる問題の解決を図ります。


①デジタルの力を活用した地方の社会課題解決

地方の活性化を図るために、地方経済・社会と密接な関係にあるような分野で、デジタル技術を活用した社会課題の解決、魅力向上を図ることが必要です。これらを実現する上で重要な要素として以下の4つを挙げています。


・地方に仕事をつくる
コロナ禍で、特に大きなマイナス影響を受けた観光、宿泊、飲食業だけでなく、そのほかの産業でもいまだに感染症拡大以前の水準に戻り切っているわけではありません。地方経済の自立のためには地域を支える産業を支えること、新たに作り上げることを促し、経済を活発にすることが必要不可欠です。

デジタル技術の活用を図りながら、その地域に関わる人たち自らの力で稼ぐ地域を作り出すことが重要となってきます。(中小企業のDX化、スマート農林水産業・食品産業、観光DX etc…)


・人の流れをつくる
人口の減少や少子化は、どの地域でも深刻な問題となっており、地方の活性化を目指すためにはある程度の人口を維持することが重要となります。

そのためには都市部から地方への人の流れを作ること、都市部に流れようとする人を食い止めること、この2つを同時に行うことが大切です。

地方ににぎわいを生み出し、様々な取り組みを支える担い手を確保することを図ります。(転職なき移住、関係人口の創出・拡大、地方大学・高校の魅力向上 etc…)

 

・結婚・出産・子育ての希望をかなえる
前述したように人口減少・少子化は非常に深刻な問題です。人口減少を抑えるために、結婚から子育てまでを行いやすくなる地域づくりを進めることが重要となります。

また、産休からの復帰などのために働きやすい環境を整えることも重要となってきます。(結婚・出産・子育ての支援、ライフステージに合わせた働き方 etc…)

 

・魅力的な地域を作る
地方に力強い還流を起こすためには、あらゆる人がその地方での暮らしに安心を感じ、暮らしやすい、魅力のあふれるような地域を作る必要があります。

デジタル技術を様々な分野で有効活用し、魅力あふれる地域を実現します。(高度な教育・医療の提供、交通・物流・インフラのDX化、地域コミュニティの維持・強化 etc…)


②デジタル田園都市国家構想を支えるハード・ソフトのデジタル基盤整備

デジタル技術の活用にはハード面、ソフト面の両面の基盤整備が必要となってきます。

デジタル基盤の整備には光ファイバや5Gなどの通信インフラの整備や、「デジタル社会のパスポート」ともいえるマイナンバーカードの普及推進・利活用の拡大が必要です。

さらには、国や地方公共団体間などでのデータの連携や、ICTを活用した持続可能性と利便性の高い公共交通ネットワークを整備すること、カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの導入などエネルギーインフラのデジタル化など、様々な方向からの基盤整備を行います。


③デジタル人材の育成・確保

この構想が実現し、全国の様々な地域でデジタル技術を活用した社会課題の解決を行うためには、その担い手となるデジタル人材の育成が必要不可欠となります。

しかし現在、その担い手の質、量ともに不足しており、さらには都市部にその人材が集中していることが課題です。

このような現状を解決するため、義務教育から高等学校、大学等での教育を通じて新たに社会に出る人材がデジタルリテラシーを確実に身に着けられるようにするのとともに、現社会人にもデジタルスキルを身に着けることができる環境整備を行います。
 

④誰一人取り残されないための取り組み

構想の実現にあたって、すべての人がデジタル化の恩恵を享受し、豊かさを実感できることが重要です。デジタルを介した格差や分断が生まれることが無いよう、十分に留意しながらデジタル化を進めることが求められます。

「誰一人取り残されない社会」の実現には利用者の立場に立ってデジタルサービスの設計を行うこと、利用者のレベルに合わせ様々な選択肢を用意することなどが必要です。

おわりに

今後、日本ではデジタル田園都市国家構想の実現に向け、基本方針で示された方向性にしたがって各自治体や企業は様々な施策・取り組みを行っていくでしょう。

現に、デジタルの活用で地域の問題を解決した取り組みを紹介する「Digi田甲子園」も開催され、今後さらにデジタル田園都市国家構想への意欲、関心が強まっていくことが予想されます。

shisalyでもデジタル活用事例を複数掲載しています。一度、デジタル田園都市国家構想に沿った取り組みがどのような物があるのか調べてみてはいかがでしょうか。