日本にはハンバーガーや牛丼チェーン店など、早く安く食べられる”ファストフード”を取り扱う店舗が数多くあります。皆さんもよく利用されるのではないでしょうか?
ファストフードは安価で、提供もスピーディーという便利さがある一方、健康面や環境面で多くの問題があると言われています。
そんな中、ファーストフード中心の食文化を見直し、じっくり時間をかけて食事を楽しむ”スローフード”という言葉が注目されていることをご存知でしょうか?今回はこの”スローフード”という言葉についてご紹介していきます。
スローフードとは
スローフードとは、伝統的な食文化を見直し、食への関心を高める取り組みのことです。一見すると地産地消と似ていますが、地産地消が地域の食材を生産地で消費することを指す一方、スローフードはもっと広い範囲で食文化について考えることを指します。
スローフードは「おいしい、きれい、正しい食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンに、食文化を取り巻く人と環境を見直すことを目標としています。
ここでいう美味しい、綺麗、正しいの意味合いは下記の通りです。
・おいしい
美味しく、風味があり、新鮮で、感覚を刺激し、満足させること
・きれい
地球資源、生態系、環境に負担をかけず、 また、人間の健康を損なわずに生産されること
・ただしい
生産から販売及び消費にわたって、全ての関係者が適正な報酬や労働条件にある、社会的公正を尊重すること
つまり、スローフードとは料理だけでなく、食文化を取り巻く生産者、消費者、環境にまで意識を向ける取り組みです。
スローフードの取り組み
スローフードの起源はイタリアにあります。1980年代に、アメリカ発祥の大手ファストフード店がイタリアへの出店を決めました。ファストフードの多くは工場で大量生産され、消費期限を長くするため、多くの保存料や化学薬品が使われています。
そのおかげで、世界中どこでも同じ味のメニューを提供することができていますが、安全性は乏しいです。そのようなファストフードの国内出展に反対するために始まったのが「スローフード運動」です。結果として、この大手チェーン店の出店を止めることはできなかったのですが、これを境にスローフード運動が世界中に広がっていきました。
代表的なスローフード運動として”テッラ・マードレ”があります。
テッラ・マードレはスピーチやワークショップを通して、食を取り巻く環境問題や文化について議論を行うスローフード最大のイベントです。また、見本市も開催され、世界各国の食品を試食することもでき、出席者は料理人や生産者だけではなく、加工業者、研究者、活動家などスローフードに関わる全ての人が参加します。
テッラ・マードレは2009年にイタリアで初めて開催されて以降、2年に1度の頻度で行われており、2022年の第14回大会では、130か国から3000人以上の代表者が出席しました。
スローフードのメリット・デメリット
次に、スローフードのメリットについて紹介します。
スローフードのメリットは以下の通りです。
・地元の食材を食べられる
・生産者が不利にならない
・環境に配慮した生産ができる
・伝統的な食文化を守ることができる
一方、スローフードのデメリットは以下のものがあります。
・食事の提供が遅い
・値段が高い
そもそもスローフードは、食文化を大切にするために生まれました。そのため、ファストフードのように早さを売りにし、安く食べることはスローフードの本質からずれてしまいます。スローフードを食生活に取り入れるには余裕のある生活が必要なのです。
おわりに
現代の忙しい日々を生きる私たちにとって、ファストフードは便利で安く、つい利用してしまいがちです。しかし、健康面や環境問題などのデメリットも潜んでいます。
まずは休日など、余裕のある日から食材や調理法にこだわって食事をしてみましょう。野菜などをどのような想いで生産しているのかを調べてみてもいいかもしれません。