2023.01.08

環境問題を解決に導く新しい経済システム”サーキュラーエコノミー”の可能性

環境問題を解決に導く新しい経済システム”サーキュラーエコノミー”の可能性

よくニュースでも取り上げられるように、私たちの身の回りでも、海洋・大気汚染、気候変動への危機感が年々増していっているように感じます。今や、環境問題は世界が最も解決すべき問題の1つと言えるでしょう。

その環境問題の解決の糸口とされているのが”サーキュラーエコノミー”という考え方です。今回はサーキュラーエコノミーとはどのようなものなのかを解説します。環境問題が注目を集める今だからこそ、ぜひ学んで欲しい内容です。

サーキュラーエコノミーの定義

サーキュラーエコノミーとは、直訳すると”循環型経済”を意味します。

世界的な経済成長と、それに伴う人口増加を背景に、大量生産大量消費が繰り返され、生態系にも甚大な被害を与えています。今後、環境を守りつつ、経済の成長を維持するためには、経済のシステムを消費型から循環型のシステムに変えていく必要があります

3Rとの違い

これまでは循環型システムとして3R(リユース、リデュース、リサイクル)の取り組みが行われてきましたが、サーキュラーエコノミーとの違いはどこにあるのでしょうか?

3Rとサーキュラーエコノミーの大きな違いとして挙げられるのは、サーキュラーエコノミーは「廃棄を前提としない」点です。

3Rは生産と消費の間における資源の再利用を想定しており、最終的に資源は廃棄となります。一方、サーキュラーエコノミーは原料を調達する段階から再利用を前提としており、今まで廃棄されてきたようなものも原料として活用します。そして、新たな原料の投入を減らし、循環させる経済モデルです。


図版出典:資源循環政策の現状と課題(経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課)

サーキュラーエコノミーの3原則

英国を拠点として国際的に活動しているサーキュラーエコノミー推進団体、エレン・マッカーサー財団は、以下の3つをサーキュラーエコノミーの原則として掲げています。

1.廃棄物と汚染を生み出さないこと
2.製品、素材を高い価値のまま循環させ続けること
3.自然のシステムを再生する

提唱者であるエレンマッカーサー財団は、この原則に基づいた経済活動や行動が、循環経済の実現において必要不可欠であるとしています。

サーキュラーエコノミーの事例

前段で述べたエレン・マッカーサー財団などのサーキュラーエコノミーの推進・普及活動が後押しとなり、国際社会においてもサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みが行われています。


・国家としての動き

日本においてもサーキュラーエコノミーへの取り組みが行われており、経済産業省が2020年5月に、およそ20年ぶりの「循環経済ビジョン2020」を策定しました。

今回新たに策定されたビジョンでは、環境の保護を重きとした3Rから、経済戦略としてのサーキュラーエコノミーへと転換したことが重要なポイントです。

・企業の動き

日本国内の自動車長期リースを提供する企業では、単に車を貸し出すだけではなく、メンテナンスを適宜行うサービスをつけた契約を行い、それを通じて車の価値を長く維持することに力を入れています。

地域に密着する形で各地にメンテナンス工場を設置し、こまめな点検をすることで貸し出す車の価値の長期保持を可能にしました。

製品の価値を高く保つこと、これはサーキュラーエコノミーの3原則のうちの「製品、素材を高い価値のまま循環させ続けること」に当てはまる重要な動きであると言えます。

サーキュラーエコノミーの課題

今後サーキュラーエコノミーという言葉の知名度、社会的価値が浸透するにつれ、実際には活動の実態がないのにも関わらず、サーキュラーエコノミーに取り組んでいると見せかける、いわゆる「ウォッシュ」というような事例が増加することが想定されます。

似たような事例として環境に配慮しているように見せかける”グリーンウォッシュ”や、SDGsに配慮しているように見せかける”SDGsウォッシュ”等があります。

サーキュラーエコノミーという言葉の理解不足からくる誤用や悪質な利用があるので、注意が必要です。”グリーンウォッシュ”について、shisalyマガジンに詳しい記事もあるのでぜひご覧ください。

このように、サーキュラーエコノミーは環境問題の解決だけでなく、今後の経済活動においても重要な役割を果たします。企業が現在掲げているSDGsの施策や、環境への配慮などにも大きく関わってくるテーマなので、それらを鑑みたうえで、取り組みを行うことが重要です。