2023.01.07

デジタル社会で輝く人材を育てる”リスキリング”とは

デジタル社会で輝く人材を育てる”リスキリング”とは

将来、私たちの周りにある仕事のほとんどはAIに取って代わられるという話を聞いたことはないでしょうか?世界では今、急激なICT化、AIの普及により手続きや作業が効率化される一方で、AIによる失業が懸念されています。

アメリカの大手シンクタンクが実施する2008年に行われた調査では「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎず、約10万人は10年後には存在しないであろうハードウェア関連の仕事のスキルしか持っていない」という結果が出ました。

また、日本でも経済産業省が「IT人材は、2030年には最大で79万人不足する」と発表しました。そんな中、現在日本企業には”リスキリング”を狙った取り組みが重要視されています。


リスキリングとは

2021年2月26日に開催された「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」で、リスキリングは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
 
近年では、その意味がより限定化されており、デジタル化やDX促進などの際に活用できるスキルを習得することとして使われています。”スキルを学び獲得する”ことから”リカレント教育”と同じものだと捉えられがちですが、両者には違いがあります。

余暇等、労働以外の時間にも役に立つことを含めた学習が「リカレント教育」であるのに対し、「リスキリング」は今あるビジネスの変化(主にDXについて)に追いつき、業績や価値を生み出し続けるための学習という意味の言葉です。


世界のリスキリングへの取り組み

リスキリングは世界全体でも注目が集まっており、2018年から3年連続で主要経済国20ヵ国が参加するリスキングセッションが開催されました。

主要経済国20カ国において、2022年までに7,500万の失業リスクが存在すると警鐘を鳴らす一方で、リスキリング革命による官民連携によるリスキリングの必要性を提唱。2020年には「2030年までに世界で10億人をリスキリングする」 ことを宣言し、リスキリングに積極的に取り組む企業、地域のためのプラットフォームを構築しました。

これにより、すでにリスキリングで成果を出しているフィンランドやシンガポールなどの事例共有や、企業・政府の連携によるリスキリングの為の教育プログラム開発がされ、海外では国や企業が自前でリスキリングのコンテンツや仕組みを開発せず、プラットフォームを活用して行うことが一般的となっています。


日本のリスキリング状況

日本の大手シンクタンクの調査によると、大企業を中心に、従業員を対象とするリスキリングに取り組む企業が増加していますが、日本企業の人材投資(GDP比)は、諸外国と比較して最も低いという結果が出ています。

また、内閣府の調査によると約4割強の企業が、自己啓発が給与などの処遇に十分反映されていない、従業員の学習を支援する制度がない、または支援制度の活用頻度が低いというアンケート結果が出ています。

企業が従業員に対し、リスキリングのために高等教育機関での就学を認めない理由としては、「本業に支障をきたす」「教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせない」という理由が多く挙げられます。

一方、同調査では企業がIT化への移行を障壁として感じていることも挙げられていますが、その内容の多くが、人材不足、スキルノウハウ不足という結果が出ています。そうしたスキル等の不足について多くの企業が課題を感じているにも関わらず、リスキリングを禁止しているということには矛盾を感じます。

日本企業がリスキリングを推進するためには、リスキリングによって自社の抱える課題の解決にもつながるということを認識することが必要です。


終わりに

近年、IT化やDXが進む事で日々の業務やオペレーションがより効率化しており、求められるスキルも日々変化しています。

変化が早い環境だからこそ、リスキリングによって新たなスキルを習得することが、自分の輝けるフィールドを広げることにつながります。企業にとっても課題とされるスキル不足などの解決につながるリスキリングは、投資すべき事柄として今後より注目を集めるでしょう。