2023.01.04

少子高齢化時代の新たな医療介護のカタチ「地域包括ケアシステム」とは

少子高齢化時代の新たな医療介護のカタチ「地域包括ケアシステム」とは

日本では長年、少子高齢化という課題について取り上げられていますが、その流れは今なお進んでいます。ある調査では、急速に少子高齢化が進み、2042年には65歳以上の高齢者人口は3800万人を超え、ピークを迎えることが予測されています。

団塊の世代は2025年で75歳以上となり、医療や介護の需要は数年で更に急増。それと同時に、病院等の医療施設・介護職員不足や単独世帯の医療ケア、急激な人口減少という問題も顕著に現れます。

医療介護の大きな転換点となる2025年。その時を迎えるまでに、既存の医療介護体制とは違う新たな仕組みづくりが求められています。そこで今回は厚生労働省が推進する新た新たな医療介護のカタチ「地域包括ケアシステム」についてご説明します。

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムとは、高齢により要介護状態になっても、医療機関での入院生活を強いられるのではなく、住み慣れた自宅や土地で自分らしい生活を最後まで続けられるように、地域ごとに「住まい・医療・予防・生活支援」を包括的・一体的に提供することです。同時に、介護保険制度・医療保険制度面からも支援を行います。

その実現に必要なのが、医療機関以外に、自宅で介護・看護を行う訪問看護や、訪問リハビリテーション、訪問薬剤指導などです。高齢者住宅やグループホーム等、自宅以外の場所に居てもその人に適した医療を受けられる環境や、かかりつけ医との連携も大切となってきます。

地域包括ケアシステムはその性質上、人的ネットワークの広がり、密度と関係者同士の連携を円滑に管理していけるかが成否の鍵を握っているといえます。そうしたネットワーク構築、連携支援を行う施設として誕生したのが地域包括センターです。

地域包括センターについて

厚生労働省によると、地域包括支援センターとは”地域住民の心身の健康の保持および生活の安定の為に必要な援助を行うことにより、地域住民の保健医療の向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的として、包括的支援事業等を地域において一体的に実施する役割を担う中核的機関”とされています。

具体的な業務内容としては、地域の高齢者を支えるために「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」「包括的・継続的ケアマネジメント」「権利擁護」の4つの業務を行っています。

地域包括ケアシステムは、地域の自主性や主体性に基づいて、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要となるため、地域包括ケアシステムの実現のためには、その地域に合った支援事業推進を担う地域包括支援センターの役割がきわめて大きいといえます。

令和3年時点で全国で5,351か所(ブランチ等を含め7,386か所)に設置され、それぞれの地域で地域包括ケアシステムの中心となっています。



地域包括ケアシステムの事例

ここからは地域包括ケアシステムの取り組みについて実例をご紹介します。

●鳥取県南部町~既存資源を活用した共同住宅による低所得者の住まいの確保~
南部町は独居老人の増加により、周囲とのつながりの希薄化が顕著で、他の地域と比べて年金受給額が低い地域です。そこで、高齢者、障害者等が地域住民とのつながりの中で可能な限り地域で暮らせるように、共同住宅を提供するモデル事業を実施しました。

共同住宅は空き家を借り受け、改修することで、人件費と家賃を抑え、低所得者にも利用しやすい料金に設定。地域交流スペースも設けることで、コミュニケーションの場を提供し、周囲とのつながりが実感できる環境を提供しています。


●三重県四日市市~社会福祉法人と地域組織の協働による日常生活支援体制の構築~
民間が主体となり、大型団地の中心にある商店街の空き店舗を活用して、①総合相談機能 ②食の確保機能 ③地域住民の集いの場としての機能を併せ持った孤立化防止拠点を運営。1日に約20名の地域住民の方が利用されています。

また、その取り組みと連動する形で、地域完結型の日常生活支援を目的とした会員制組織『ライフサポート三重西』を発足。65歳以上の高齢者等向けに、地域住民による安価な日常生活支援サービス提供システムとして機能しています。結果、高齢者の閉じこもり防止、生活支援の充実、地域住民の互助の促進に繋がっています。

おわりに

このように、地域包括ケアシステムは少子高齢化が進む日本において、高齢者の方が安心して生活するための地域の生活基盤になりつつあります。その充実の為には医療機関、民間、行政の連携が必要不可欠となるでしょう。